今月の一冊

社協だよりえがおNo.140今月の一冊で掲載した、遠藤周作さんの「落第坊主の履歴書」を紹介します。
著者は有名な芥川作家であり、その飄々とした風貌や気さくな言動から、多くのファンが存在しています。しかし小説は「沈黙」、「海と毒薬」、「深い河」など、宗教や死をテーマとした作品を多く著わしており、歴代の芥川賞受賞作家の中でもその「重厚」な作風は際立っています。
半面エッセイには「ぐーたら人間学」や「ぐーたら社会学」など、小説の重さとはかけ離れた人間味溢れる、寛大な、人への優しい視点から綴られた作品が数多くあります。
本書もその中の1冊です。著者は幼少時中国の大連で過ごし、本人曰く「ヘマばっかりの少年時代」であったと言います。雨の降りしきる朝、雨合羽を着て「ジョーロ」で庭の花に水をかけていたところ、その光景を見てびっくりした兄が母に注進し、注意を受けながらあまりに愚かな自分にひどく落ち込んだそうです。小説家として名を成した後、親しい作家と雑談した折に、その作家から『出版社の若い編集者が急に原稿を取りに来たので、「君、前から電話をくれないと困るよ」と注意したら、次は家の前のタバコ屋から電話をして、原稿を取りに来たので笑ってしまったよ』と聞かされ、遥か昔の「ジョーロ」の苦い記憶がよみがえってきたということです。
本のタイトルは忘れましたが、昔「読書は最高に贅沢な趣味である。好きな時に、好きな場所で多くの人の思いや考えに触れることができる。という文を見たことを、このコーナーを書くにあたって思い出しました。読書を心からお勧めしたいと思います。