今月の一冊

8月15日.社協だよりNo.126『今月の一冊』で紹介した本をこのブログでも紹介します。

証言 水俣病
m280815
編者:栗原彬
発行所:株式会社 岩波書店

この本には、10名の水俣病患者の方の体験や想いが語られています。
1959年に水俣病が公式に確認された後も、原因であるチッソ水俣工場からの有機水銀を含む排水のたれ流しが続きました。1968年に水銀流出が止まり、公害病として認められます。しかし水俣病は、行政の審査で認定されなければ患者と認められないため、申請しても棄却となり、治療を満足に受けることができない人も多くいました。本の中では認定患者、未認定患者の間に隔たりができ、地域の人のふれあいがなくなったという被害が一番大きいと語られています。未認定患者の問題に立ち向かうため、自らチッソ水俣工場前に座りこみをして交渉するなどしてたくさんの人が闘われます。しかし、みなさんの心からの叫びは届かず、1996年には裁判や認定申請などを取り下げることを条件に一時金等を支給するという和解案が出され、身を切る思いで和解案の受託という決断をされたそうです。病状が悪く体もいうことをきかなくなってきたため泣く泣く受託をしたこの時のみなさんの心の苦しみは想像ができません。
緒方正人さんは、水俣病患者として生きているわけではない、人として生き、一人の「個」に帰りたいと語られています。病気、差別に苦しめられ、和解案を受託せざるを得なかった方がたくさんいた水俣病事件という事実だけでなく、魂を持った一人の人間として生きていく中で救われたいと願い続ける方がおられることを知り、公式確認から60年がたった今、改めてこの問題は終わることはなく、ずっと考え、学んでいかなければならないことだと感じました。(みぞくち)