今月の一冊

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この本は、長い間、発達障害に関わってきた2人の精神科医 石川憲彦さんと高岡健さんの対談で構成されています。
お二人は、発達障害ブームとも言える昨今の流れに疑問を抱いておられ、本人の希望とは異なる他者の求める進歩や発達のために、診断と治療を押し付けられている現状が詳しく書かれています。
どんな人でも発達障害だとカウントすることができる時代であることや、発達障害について、脳の異常と判断できるわけではなく、肯定的に受け止めるまなざしや多様性に尊重するゆとりを学校や社会が失っているため、増加傾向にあると感じられているだけであると述べられています。
次に、薬を使わない治療法に触れ、石川さんは、子どもが騒いで眠れないという保護者がいたら、子どもに睡眠薬を飲ませるのではなく、親のほうに飲ませるのが基本だと言います。また、「ほとんどの投薬は、病気に効くのではなく、生活上の必要悪である」と語り、薬を処分する問題点にも触れられています。「毒になるから使わないほうがいい化学物質をあえて使うためには相当の理由がいる」という言葉には衝撃がありました。
また、不登校については、かつては、背景にいろいろな病気があるとされて、病気を治療することで解決していこうという発想があり、それを発達障害と結び付けていたそうです。けれど、それは間違っていて、自分で自分を取り戻すためのとても価値ある生き方であることが書かれています。ひきこもり支援事業を担当している私にとって、とても勉強になりました。
障害を異質なものとして分けて「私がこの子を理解してあげなければ」と考えるのではなく、「この子と一緒にいると面白いな」「こうすれば伝わりやすいな」と当たり前のように接していけるような環境が大事であり、そういう見方を周囲の方たちがしてくれるかどうかによって、本人の生きやすさは変わってくることを強く感じた一冊でした。(きはら)