今月の一冊

社協だよりNo.99に掲載している『今月の一冊』をご紹介します★

『こころの医療宅配便 精神科在宅ケア事始(ことはじめ)』
著者/高木俊介  出版社/文藝春秋

この本は、精神科医である著者が京都で取り組んでいるACT(Assertive Community Treatment)の活動について書かれています。ACTとは、重いこころの病により長期入院や頻回入院を余儀なくされていた人が地域で生活するための支援の方法です。この支援の特徴は、本人の暮らしている所に、医師や看護師、精神保健福祉士など様々な職種の専門家がチームを組んで訪問するところにあります。それにより治療だけでなくリハビリテーションや社会復帰支援、就労支援まで一貫して行うことができます。また、その支援が24時間365日行われます。日本では財政的にも制度的にも基盤が整っておらず、著者が初めて取り組み、ACTを京都で行う組織として『ACT-K』と呼ばれています。
 本の中では、ACT-Kのスタッフが支援をしている方々の具体的な事例がいくつか挙げられており、病院を出ていざ地域で暮らしていくなかで、病状や周囲との関係でうまくいかないこと等が描写されています。そんな時にACT-Kのスタッフは、本人の声を一番に大切にし、そばにいて一緒に考えながら解決していくのです。
 著者をはじめとするスタッフ全員が、本人が『希望』を手にすることができるよう一生懸命に支援する姿が印象的です。また、本に登場する地域でいきいきと生活できるようになっていく方々の話から、支えるということはどうあるべきなのかを見つめなおすことができました。他にも日本の精神病院の問題や根強く残る偏見について問題提起されており、たくさんのことを感じ、考えることができた一冊です。